魂の闇夜の時代の話1
- 二子渉
- 10月5日
- 読了時間: 2分
僕は都立の西高校を卒業し東工大(現:東京科学大学)に進学してからすぐに、「魂の闇夜」と呼んでいる大変な精神的危機の時代に突入し、それが終わるまで約8年かかりました。
その時点で人生の1/3近くを暗闇の中ですごしたことになります。長かった。
大学入学して間もなく、突然全てが無意味に感じられるようになりました。
生きていることも無意味で、世界の何もかも無意味。
この無意味さは、なんていうんだろ、もうね、なんともいえない不気味さと空虚感なんですよ。
体は至って健康。やりたかった太陽光発電の研究に向けて入りたかった学校に入り、部活のオーケストラでも重要なポジションになって活躍したりしていたり、外から見たらどこにも不満な要素などない状況。
だけれど、リアリティの全てがガラス越しのような、じかに触れられないような感じもあって。
精神的には発狂寸前みたいな追い詰められ感が常にある。
これを誰にどう話してもわかってもらえない。
僕自身もよくわからないんだから無理もないんだけれど。
しかもその無意味さの感覚というか、感覚と感情の白骨化みたいなプロセスが、じわじわと進行していく。
ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」で、「虚無」が広がっていくという描写があるんだけれど、あんな感じで、世界が白黒になり、全てが体温と色を失う、その感じが地平線からじわじわと、着実に近づいてくる。
そのうち、自分で話していることばも、焼かれてカラカラに乾いた骨みたいに、軽くて脆くて命のないものになっていることに気づきます。
日本語文法に沿ってコミュニケーションは取れるけれど、そこにいのちもたましいもない。
当時の日記で、もっとも極まってたときのノートの1ページは、ほとんど空白の紙面に、単語のようなものがいくつか散らばっている。
そんな感じだったのです。
つづく

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